墨壷
大工にかかせない道具に、「墨壷」があります。
簡単に言うと、墨をつけた糸を張り、それをはじくことで、相手に直線の墨をつけます。
この「墨壷」、奥が深い道具なのです。
先日、社寺なども手がける大工さんと話をしたときの事。
「自動巻きの墨壷は、糸が捻るから、本当の直線は打てへん」
自動巻きの墨壷とはこれです。
中にぜんまいが入っていて、墨を打った後は、糸が自動で巻ける優れものです。
・・・全然知りませんでした。
更に、墨を打つときに、糸をわざとネジって、曲線の墨を打つことも出来るとか・・・。
墨壷といえば、浪漫のある話を一つ。
明治時代に、東大寺の改修を行ったときに、南大門の梁の上から鎌倉時代の墨壷が
発見されました。
発見当時は、大工が忘れていったもので、「忘れ物の墨壷」と呼ばれたそうですが、
大工にとってとても大事な墨壷を忘れて行くはずがない。
だいいち、次の仕事場で仕事が出来ない。
現在は、志事を終えた大工が、わざと置いていったんじゃないかといわれているそうです。